フリースタイルフットボーラー&トリリンガルカメラマンmasato@14か国334日間の旅終了

英語・スペイン語・日本語の3ヶ国語でフリースタイルフットボールを教えられる世界で唯一の男です。プロフィール写真撮影もしています。

ベネチア海戦

今日は少し歴史の話をしたい。異国の地・伊太利亜にて、一人の侍が刀も持たず知性と根性をもってして海軍に果敢に挑み、仲間を奪還した話を。



時は去ること2012年夏。brianとの欧州旅行にてイタリアはヴェネチアへと立ち寄った。ま~洒落たところであった。どこからどう写真を撮っても絵になる。”アドリア海の女王”なんて呼ばれたりもするそうで、大変歴史ある街である。そんなヴェネチアにはイタリア海軍基地なるものがある。かつての造船所をそのまま海軍が基地として使っているそうだ。写真はこちら。

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とてつもなく洒落ている。ちなみに勤務している海兵もウルトラ洒落ている。

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どーん!後ろのボリューミーお姉さん邪魔だよどどーん!
この数時間後、イタリアが世界に誇るこのダンディー海兵といち大学生の自分が、まさか死闘を繰り広げる事になろうとは思いもしなかった。




あまりにイカしたスポットだったからであろう、brianがおもむろにボールを使って動画撮影を始めた。当初は”おいおい、水路に落とすなよ”とちゃちゃを入れていたのだが次第にbrianに感化され、自分も少し蹴りたくなってきた。
いやしかし!憐れかな、若さとは愚かさと同義語であることを痛感させられる。何を思ったか、ボールを上に蹴り上げ逆立ちでキャッチするというなぜか派手な技を選択し、結果見事に水路にボールをぽちゃんしてしまった笑。こんな感じ。

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落としてしまった瞬間は「やべ、落としたったw」とか言って、こんな状況写真を撮るほどに余裕があった。いやしかし!見た目以上に流れの速いこと速い事。海からの波の影響もあり、ボールはどんぶらこ~どんぶらこ~とあっという間にはるか彼方へ流れてしまった。僅かに目には見えるが、ほぼ点と化したmy speedcell(ボールの名前)
あいつとの今生の別れが頭をよぎり、楽観的な拙者もさすがに焦ったでござるよ。





入口には複数言語で立入禁止の文字。しかしこんなものを気にしていてはボールがどんどん流されてしまい、最悪の場合基地の向こうの海へ漂流してしまう!そうなってはもうやつを救えない!意を決して海軍基地敷地内へと潜入するしかなかった。きっとイタリア法を犯してるんだろうな~とビビりながらも進む。
ぎゃ~!数メートル進んだところで当たり前なのだが海兵に遭遇した。手持ちのポケモン6匹中5匹は瀕死、残る1匹は辛うじて生きているも毒状態、一刻も早くポケモンセンターへ行きたいそんな最中にトレーナーに見つかっちゃったよそんな心境。そう、絶体絶命。
海兵はイタリア語で”ここは軍の基地である。早く出ていけこの中国人オラオラ!”的なことを早口でまくし立てる。(欧米ではアジア系の顔はとりあえず中国人とされる)絶対に怯んではいけない、怯んだ瞬間にこの身長190センチオーバーのムキムキ海兵さんに力づくで放り出されてしまう、直感的にそう思った。何かこのムキムキ海兵さんに言わなくては、そう思うが先か口が先だったか、拙者はこう言ったのでござる。

”Escuchame!(エスクチャメ!)” ( スペイン語で、おれの話を聞いてくれ!英語のlisten to me)

この言葉を発した瞬間にムキムキ海兵さんの反応が明らかに変わった。”何だ中国人、スペイン語を話せるのか。じゃあちょっと聞いてやるよ”と。イタリア語とスペイン語はもともと同じ言語でありそっくりな単語も多い。拙者の閃きの勝利であった。
勝手に基地内へ入ってしまったことは申し訳ない、自分は日本人であり、日本人は信用に足る人種である、今現在ボールを蹴りながら旅行をしている、運悪く地元のガキ共にボールを水路に落とされてしまった(嘘も方便)、ボールはとても大切なものでありボールなくして旅は続けられない、小さいボートのようなものがあれば是非それでボールを救出して頂けないだろうか、誇り高きヴェネチアの海兵よ、みたいなことを(英語と日本語をたまに混ぜながら主に)スペイン語で言った。
ムキムキ海兵さんは2言語をミックスしたスペイン語もどきを話す日本人に明らかに困惑していた。事態が硬直していたそんな時だった、やつが現れたのは。





拙者は自分が大きな過ちを犯してたことに気が付いてしまった。いや、気が付かざるを得なかった。イタリア海兵は全員が半端じゃなく巨体かつムキムキだという事実に。新たに目の前に現れた海兵は服装も違うし、明らかにボスの雰囲気を身に纏っていた。幽遊白書の戸愚呂とか、ターミネーターのアーノルドシュワルツェネッガーとか、one pieceの白ひげあたりを想像頂きたい。多少の誇張はあるが、イメージは間違っていない。新たに目の前に現れたボス海兵を軍曹と呼びたい。
アドレナリンを全開に軍曹の説得を試みるも、こいつには手も足も出なかった。少しばかり話を聞いてくれたものの、数分の内に力づくで追い出されてしまった。そりゃそうだ。軍隊の敷地に不法侵入してるし、拙者外国人だし。こいつら腰にピストル差しててめちゃこえーし。こいつ軍曹だし。





子供の頃に戻った気持ちだったでござるよ。自分の非力さを思い知らされた。無力、圧倒的に無力。ていうかそもそもなぜあの時あそこであの技をやったんだ的なね。後悔、ひたすらに後悔。ありとあらゆる5W1Hを後悔。ただ茫然と、恨めしく基地内を漂うボールに視線を送ることしかできなかった。





しかしまだ神には見放されてはいなかった。あまり神様とかを信じるタイプではないが、この時ばかりは震えた。基地内にサッカーの格好をした若者数名が目に入ったのだ。海兵のサッカー好きで結成しているチームが蹴り終わり、帰還したのだと思われる。
その場の空気が変わるのを微かに感じ取った。一緒にいてくれたbrianも拙者を何とか励まそうと”あいつらボール取ってくれるかもよ!”と言ってくれた。しかしなにぶん軍曹にコテンパンにやられたばかりで傷心だったため、”う、うん…”くらいの返答しかできなかった笑。
基地内は当たり前だが内部が良く見えない。ボールも見えないところへ流されていた。これは想像でしかないが、若きサッカー海兵達が岸に流れていたボールを拾ってくれたと思われる。何せあのボールは国際大会でも使えるほどの高級ボールだから、サッカープレイヤーがプカプカ水面に浮かぶあのボールを見逃す筈はない。そしてまたこれも想像なのだが、若きサッカー海兵達が軍曹に報告したと思われる。「軍曹!敷地内海面にサッカーボールが浮かんでいた為、救出をしたでありますっ(敬礼!)」と。





僅かな望みにかけて何らかの海軍の反応を待っていた拙者は、自分の目と耳を疑ったでござるよ。軍曹が入口からひょっこり姿を現し、こちらに向かってこんな言葉を投げかけてきた。





























「へい、amigo!ボール取れたぞ♪(満面の笑みで!)」




























…これがイタリアの男か。何という態度の豹変ぶり。ノリが良すぎる。っていうか軽すぎる。このノリで女を次々と口説いているのか。amigoて。へいamigoて。ついさっきまで”てめーいい加減にしないとぶち殺すぞクソガキ!さっさと出て行きやがれ!”的なことを、まじで人殺す目つきで3センチの距離で唾飛ばしながら言ってたじゃないか軍曹…、と様々な感情を抱きつつも招かれるままに基地内へ進んだ。(軍曹が持ってくるんじゃなくて、またおれが基地に入っていいんのかよっていうね笑)
そしてボールとの感動の再会。軍曹が手渡してくれた。軍曹とは無言のshake hands、からのbig hug。戦った男同士、言葉なんて要らなかった。
イタリアとの関係を揺るがしかねないこの大事件は、かくして熱き男の友情物語として幕を閉じたのである。





水路に落としてからボール奪還までの約3時間、一体どれほど濃密な時間だったのだろう。とりあえず言いたいのは、諦めなければ何か起きますよと笑。





ボール奪還後の表情はbrianのこの動画の3:57辺りに一瞬収められている。

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それにしても拙者、ボール奪還後にbrianの放った言葉が忘れられんのだ。
「まーおれがmasaだったら、ボールが落ちた瞬間に飛び込んでたけどね。」



痺れるでござるよ~!!!!!